2023年春闘に思うこと(23年3月16日)

 自動車、電機、重機械などの大企業の「春闘」で満額回答が相次いでいる。JAM幹部などはもう有頂天だが、それほど、それは寿ぐべきことだろうか。
 今に始まったことではない。かつて日産自動車では満額回答が慣例だった。そもそも組合の要求そのものが企業とのひそかな合意のもとでつくられていたからだ。今年も、組合が経営側の意向に抗して交渉でがんばったというよりは、欧米では考えられないことだが、要求額が企業側との事前調整が行われていたため、すんなりと「妥結」したのではないか?ストの構えなんてはじめからなかったというのは、もう野暮なことだろうか。もともと要求水準が低すぎる。今の4%の物価高では、たとえ定昇込み3.8%で収束しても実質賃金の上昇は見込めない。せめて10%くらいの要求が当然ではないか。
 連合や「識者」は、この満額回答が中小企業や非正規労働者の賃上げに波及することを期待している。しかり大企業正社員以外の労働者の賃上げこそが最重要の課題である。しかし、上の「期待」がほんものなら、連合傘下の大企業労組は、自社の取引先、とりわけ下請企業でのコストアップにみあう価格引き上げの容認をはっきり「要求」すべきであろう。そこで闘え。あるいは、いま真に意義ぶかい営み――非正規労働者を組織するいくつかの地域ユニオン・コミュニティユニオンが連帯して10%賃上げを求める直接行動を、財政的に、または組合員の動員をもって支援すべきである。それらができるか? できなければ、大手企業の春闘相場がどうあれ、実質賃金の確保は危うく、社会的な賃金格差と中小企業労働者と非正規労働者の構造化した低賃金は変わらないだろう。