旅のアルバム 2010年代特別編 シリア・ヨルダンの旅 2011年3月

 歴史に思いをはせる者のひとりとしてシリア・ヨルダン地方の旅は長らく憧れの訪問であった。なにしろここは紀元前(BC)4500年の頃から東西数多の権力国家が盛衰をくりかえし、30もの文明が壮大な遺跡を残す地域である。シュメール、アッカド、バビロニア、ヒッタイトも、ペルシャ、ヘレニズムも、ローマもピザンティン(東ローマ)も、イスラムのウマイア、アッバス、ファティーマ朝も、そしてオスマントルコもここを支配する。狡猾なフランスによるシリアの委任統治を経て、シリア・アラブ共和国が成立するのはやっと1946年であるが、それまでここは、いくつかの古代都市と砂漠と人びとの生活の営みのある地域であった。その後、シリアがそれぞれ大国を背景にもつ政治勢力同士の、そしてIS(イスラム帝国)とのすさまじい戦乱の軌跡を辿ったことは私たちの記憶に新しい。
 このツアーはなかなか成立しなかったけれど、やっと成立した出発日はなんと東北大震災・福島原発事故3日後の3月14日であった。今さらキャンセルするのは残念にすぎたが、出発には内心忸怩たるものがあった。福島大学に勤務の次男が福島市の中通りにいて、万一支援が必要なとき不在では申し訳ないと思ったからである。成田空港に到着するのにも交通にかなり苦労した。
 だが、「あえて敢行」したこの旅行はやはりすばらしかった。それぞれの時代の建築は壮麗で、あるいは廃墟の美を留め、あるいは庶民の生活に溶け込んでいた。その喧噪も快く、家族や若者たち、子どもたちの人懐っこさはとりわけ印象的だった。若者たちにはアラブの春がそこに来ている自由の雰囲気があった。気楽な観光客ではあれ、この人びとに自由と平和あれ!と、心から願い続けたものである。
 ここでもずいぶん絞り込んだ30枚ほどの写真をぜひ見てほしい。すべてが美しい。以下は最小限の説明である。はじめに書いた歴史の記述は、不十分な説明を少しは補うかもしれない。

*各画像をクリックすると画像とキャプションが拡大表示されます。

<シリア>


<ヨルダン>


<追加;フラッシュバック>