2025年から私は元旦のFB投稿をもって賀状に替えているが、最近、ゼミ卒業生との電話で、40年来、私が年賀状に引用してきた俳句を知りたいという希望が伝えられた。そこで今回、歴代の引用俳句一覧を再録することにした。総じて時代状況は暗い、それでも屈せずに頭(こうべ)あげて生きてゆこう、そんな気力の漲っているすぐれた冬の作品たちに、私の心象を託している。
1987 きびきびと万物寒に入りにけり 富安風生
1988 凍土行く生きものの耳我も立て むらこしかせき
1989 くれないの色をみている寒さかな 細見綾子
1990 冬霧ゆく船笛やわが在るところ 橋本多佳子
1991 (年賀欠礼)
1992 四囲の音聴きすますとき冬深く 加藤楸邨
1993 北風に牛角を低くして進む 西東三鬼
1994 枯野行き橋渡りまた枯野行く 富安風生
1995 明日ありやあり外套のボロちぎる 秋元不死男
1996 焚火かなし消えんとすれば育てられ 高浜虚子
1997 北風に言葉うばはれ麦踏めり 加藤楸邨
1998 道の上冬の日向へ出るところ 中村草田男
1999 雪の下短かき歌をくり返す 細見綾子
2000 赤きもの甘きもの恋ひ枯野行く 中村草田男
2001 チンドン屋枯野といへど足をどる 加藤楸邨
2002 いまありし日を風花の中に探す 橋本多佳子
2003 冬草のむらさき極む耐ゆるさま 前田青邨
2004 大艦をうつかもめあり冬の海 飯田蛇忽
2005 世のさむさいひ昂りつ言吃る 加藤楸邨
2006 吹雪すら木の沈黙をうばふなし 加藤楸邨
2007 孤児の独楽立つ大寒の硬き地に 西藤三鬼
2008 息白く妻が問うよく寐ねしやと 日野草城
2009 元日やゆくへもしらぬ風の音 渡邉水巴
2010 枯蔓に引かれじとする力かな 富安風生
2011 わが歩む落葉の音のあるばかり 杉田久女
2012 寒波急日本は細くなりしまま 阿波野青畝
2013 しんしんと寒さが楽し歩みゆく 星野立子
2014 大寒の街に無数の拳ゆく 西東三鬼
2015 いくさよあるな麦生に銀貨天降(あも)るとも 中村草田男
2016 人が焚く火の色や野の隅々に 西東三鬼
2017 夢に舞う能美しや冬籠 松本たかし
2018 石と石打って生む火を枯野原 加藤楸邨
2019 だんだんに人黙りがち虎落笛 加藤楸邨
2020 餅花や不幸に慣るることなかれ 中村草田男
2021 今も目を空へ空へと冬欅 加藤楸邨
2022 生けるものは重たさ持てり雪夜にて 加藤楸邨
2023 幾谿も雪明かりのみ見つつ来ぬ 加藤楸邨
2024 ひぐれの枯野もう誰の来るあてもなし 加藤楸邨
2025(FB投稿)末枯の野をわたりりゆく日の遠さ 加藤楸邨
2026(FB投稿)パン種の生きてふくらむ夜の霜 加藤楸邨