福岡市が民間委託する水道検針業務について、委託先企業すべてでパート検針員の最低時給を同じ水準にすることが決まった。自治労傘下の「福岡市水道サービス従業員ユニオン」が、市の東部と中部の委託先企業2社と結んだ労働協約を、歩合給の切り下げがあった西部をふくめて全市に適用するよう県に申し立てた、いわゆる労働協約の地域的拡張運動の結果である。これにより全市規模で、検針員は、最低時給1082円、一定の業務実績という条件を満たせば1420円~1605円 になり、労働保険・社会保険の加入が保障されるという。
これまでも地域的拡張の事例は11件みられたが、対象は正社員に限られ、民間委托の非正規労働者に適用されるのは今回がはじめてという(以上、朝日新聞24年1月6日)。
官・民を問わず委託・下請企業の非正規労働者の労働条件を包括的に下支えする労働協約の拡張は、今日もっとも労働組合運動に求められるアジェンダである。今回の達成は、民間委託企業の労働条件を公務員のそれと均等にする西欧型ユニオニズムの水準にはなお到っていないとはいえ、日本の労働界では画期的な第一歩の営みだ。その意義ははかりしれない。私には、ほとんど絶望的にみえる労働組合運の現状のなか、それは久方ぶりの希望の兆しだった。自治労は、これを先駆として、広汎な正規職員以外の働き手の労働条件の規制に突き進んでほしいと願うものである。