2025年、平穏な日々を願う私たちをもっとも不安をもたらすのはもうすぐアメリカ大統領になるトランプの政治である。トランプが怖い。
ひとりの庶民の精査なき印象の素人論議かもしれないけれど、トランプは、国益と自由の名のもとに、「弱肉強食」の界隈をいくらかは掣肘する公共サービスと社会的規制を担う公共部門を徹底的に削減するだろう。なにしろ国民規模の健康保険制の主張者さえ「過激な社会主義」と断じる彼のことだ。制約のない新自由主義の施策が推進されよう。格差是正の正義論などはもう通らない。トランプに進んで協力するIN界の巨頭ザッカーバーグが、これまでのファクトチェック作業をやめることの結果も深刻である。NETにあふれる根拠のないフェイクに熱狂する、およそ知的検証から自由な右派ポピュリズムの徒が「世論」をつくる傾向はいっそう強まるだろう。
対外的には過大な関税が、貿易の困難化を通じて各国の経済を苦境に陥れる。そればかりか、トランプの国防論は、メキシコ湾をアメリカ湾と呼ぶ、グリーンランドの領有を主張するなど、対外膨張的だ。一方、ヨーロッパの排外主義的右派政党が支援される。ウクライナについては、北の暴君プーチンと結託して、ウクライナに侵略者ロシアへの領土の割譲を前提にした「平和」を「達成」しようとしている。膨大な犠牲に耐えて、ロシアのような国になりたくないと青息吐息の抵抗を続けるウクライナの人びとの不安は想像するにあまりある。
日本にも、集団安保の負担金が確実に増やされることに留まらない困難が確実に降りかかる。その日本では、投資ガールたちがトランプ景気による株価上昇にはしゃいでいる。石破政権は、そして日本の民衆は、経済、政治、社会のありかたについてトランプの圧力と闘うことができるだろうか? 核兵器禁止条約への加盟を訴える日本被団協の老いた代表が石破首相との会談の虚しさを憮然として語るところに、まだしもほのかな希望がある。